かりぶにて。

2007年12月3日
「みんなおはよー」。
「おはようございます。今日は随分と早いですね」
「私もたまには早く起きないとね。これでも一応船長だし
「一応ではなく、ちゃんとした船長ですよ。自信を持ってください」
「ありがとう、いくばぁる。ところでらんすろっとは?」
「私が起きてからは見かけてませんね。まだ寝ているのかも知れませんね。」
「ふっふっふ。起こしにいって寝ぼすけー!って言ってこようかな?」
「誰が誰に寝ぼすけって言うって?」
「げっ、らんすろっと。何処から沸いて出るのよ」
「何処からでもいーだろ。心配しなくてもお前より遅く起きるなんてことは天と地はひっくり返ってもねーよ」
「そ、そこまで言うことないじゃないっ。今日はちゃんと早起きしたんだしっ」
「んなもん、船乗りとしちゃ当たり前だっつーの。お前、船長じゃなきゃとっくにクビだぜ、クビ」
「じゃぁ、その船長とやらの権限であんたをクビにしたっていーのよ?」
「へっ。やれるもんならやってみろよ。んなことしたらまともに船が動かなくなるのがオチだぜ」
「やってやろうじゃないのっ!あんたなんかいなくっても、あんたより優秀ないくばぁるがいるから大丈夫なんだからっ!」
「お前なー、ただでさえいくばぁるに負担かけてるのに、これ以上増やす気かよ?それでも船長か?」

「・・・」
痛いところをつかれちゃったわ。
いくばぁるが何も言わずにやってくれちゃうからつい甘えて負担をかけてるのは確かだもの。
悔しいけど、らんすろっとをクビにしたらまともに船が動かなくなるのは本当だわ。
一言も二言も多いくせに、ちゃんと核心をついてくるんだから。

「らんすろっと、ちょっと言いすぎですよ。船長はがんばってらっしゃるんですから」
「そーやってお前が甘やかすからいつまでたっても一人前の船乗りにも船長にもなんねーんだよ。」
「私はがんばってる船長を助けているだけですよ?」
そう言って微笑むいくばぁるは少し怖かった。
「船長、今日の買出しと出港準備は全部らんすろっとがやるそうですから。ゆっくりしていただいていいですよ」
「げっ。お前なー。そーやって何でも俺におしつけるのいい加減やめろよなー」
「さ、船長。あちらで朝ごはんにしましょう」
「おい無視すんなよっ!ったく。過保護にも程があるぜ・・・」

「いくばぁる。らんすろっとはあのままでいいの?」
心配になって聞いてみる。
「えぇ。彼も一人前の船乗りですから。やるべきことはちゃんとやりますよ」
「そっかー。こんなこと聞いてるようじゃ、私もまだまだね」
「いえ。本当に船長は本当によくがんばってらっしゃいますよ。昔の船長とは比べ物になりませんよ。」
「そんなに昔の私って酷かった?」
「コンパスの見方を間違えて、進路を西と東の間違えてたり。」
「そ、そー言えばそんなこともあったわね。オホホ」
「仲間とアフリカに琥珀を売りに行く途中に嵐に遭遇したのに、帆をたたまずにほとんどの琥珀を失ったり。」
「そ、そんなこともあったかしら。オホホ」
「上陸地点を間違えて、エジプト北岸を5周グルグルして、ギザのピラミッドが見つからなーい!とか大騒ぎしてみたり」
「うっ。も、もうわかったわ。それ以上は言わないで。何か情けなすぎて泣きたくなってきたわ・・・」
「その頃から比べれば、今の船長は本当によくやっていますよ。私が口を挟む必要がほとんどありませんし」
「比べる基準が間違ってる気もするけど。でも、そーいってもらえると素直に嬉しいわ」

「買出しと出港準備終わったぜ。いつ出港する気だ?」
「もう食べ終わったし。30分後に出港しましょう。」
「わかったぜ。じゃぁ、船員達にそー言ってくるぜ」
そー言うやいなや、足早に去っていく。
「よろしくね」
そんな彼の背中に声をかける。
「さ。私も準備してこなくっちゃ。じゃ、また後でね」
「わかりました。船でお待ちしています」

「今日もカリブ掃除に行くわよー」
「おー!」
「進路を西へ。いつもの場所へ」
「アイアイサー!」

後から後からわいてでるバッカニア海賊を掃討していく。
「今日も稼ぎは上々だぜ」
そんな私たちの後ろをつけまわすかのように1隻の船がウロついている。
「あの船はなんだ?」
「イスパニア国籍の船ですぜ。しかもちったぁ名の知れた海賊のようですぜ!
「いくばぁる、どうしよう?」
「相手の素性も装備もよくわかりませんし。しばらくは様子を見ましょう。こちらがバッカニア海賊と戦闘している間に襲われることはありませんし」
「そうね、そうしましょう。いざとなれば逃げればいいんだし」
「じゃぁ、そーいうことにして。見張りはあの船の動向をしっかり見ておけよ!こっちに来るようならすぐに知らせろ!」
「アイアイサー!」
幾度か後ろから襲撃されそうになるが、その都度バッカニア海賊と交戦に入り、何とか難を逃れ続ける。
そー言えば、昔は海賊を見かけると動機が激しくなり手に汗が滲んでいたっけ。
今は冷静に対処している。
いくばぁるの言うように、少しは自信を持ち成長してるってことかしら?
私が成長したわけではなく、優秀な副官達とヴェネガレを手に入れたからかも知れない。

「船長、そろそろ資材がつきそうですぜっ!」
「わかったわ。資材がつきて襲われたらひとたまりもないし。一旦補給に戻るわよ」
帆を張り替え、後方の注意を怠らないように指示を出す。
案の定、こちらの動きを察知したようにイスパニアの船が追いかけてくる。
追いつかれることはないだろうが、念には念を入れる。
「よし、あそこのバッカニア海賊へ戦闘を仕掛けろっ!」
「アイアイサー」

こちらが戦闘を開始した為、手が出せなくなったイスパニア船は他の船を襲うべく戻っていく。
作戦通りだ。
そのまま港への航路で待ち伏せされるという懸念もあるが。
相手はガレー系で、こちらの戦闘が終わるのを待つほど物資に余裕はないはず。
万が一、そういう事態になったとしても。
バッカニア海賊との戦闘を長引かせ持久戦に持ち込めば。
相手は補給しに港に戻るか、他の船を襲いにいくしかないわけ。
その隙にこちらは港に戻ればいいだけ。

『最善の策を考えている』だけでは多くの船員の命を預かる船長としてはダメなのだ。
『万が一それがダメになった時の次策を考え打てる手は全て打っておく』
これが出来てはじめて一人前の船長なのだ。
そういくばぁるに教えられた。
無能な船長に率いられる船ほど愚かなものはない、とも。
今の私はいくばぁるに認めれられたる船長ではない。
しかし、いつの日かいくばぁるが認めたる船長になってみせるわ!

ウィレムスタッドの街に無事に戻ってきた私達。
イスパニア海賊へどう対抗するか。
相手は名の知れた海賊だ。1:1で勝てる見込みがどれぐらいあるのか?
ひょっとしたら全くないのかも知れない。
むざむざ、船員達を危険にさらすわけにはいかない。

やはりここは共同戦線をはかるのが上策だろう。
同じイングランド国籍の仲間がバッカニア海賊と戦っているのを何度も見かけている。
彼らだって、イスパニア海賊に襲われるのを善しとしていないはずだ。
顔を合わせたことも、話したこともないが。
声をかけてみる価値はあるはずだ!
交渉の結果、快い返事をいただけた。
出港準備を整え、出港した頃にはイスパニア海賊の姿も形もなくなっていた。

そのまま共同戦線をはり、バッカニア海賊掃討を行う。
そう言えば、こうして艦隊を組んでバッカニア海賊を襲うのは久しぶりだ。
昔は「壷」と呼ばれた、ウィレムスタッド南がバッカニア海賊の根城だった。
しかし、いつの頃からか、バッカニア海賊は根城をかえ、ウィレムスタッド西にある小島周辺をはいかいするようになった。
度重なる海軍将校達の襲撃に、バッカニア海賊が負けたからなのかも知れない。

私は白兵only。相手は砲撃中心。
戦闘における方向性は違ったが、艦隊を組み戦闘することはやはり楽だった。。
敵船が艦首を仲間に向けるような動きをしたり。
混乱させてくれた敵船に襲い掛かり拿捕したり。
お互いに修理・外科・消火をし支援しあったり。
共に戦った時間は決して長くはなかったが、とても有意義な時間を過ごせた。
また機会があれば、共に戦いたい!と思えました。

そして今日も。
いくばぁるとらんすろっと、船員達に囲まれ、カリブの海へ漕ぎ出す。
何故、私が海に出たのか。
そこに広がる海があるから!
そして多くの出会い、仲間がいるから!

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