趣向を変えて。

2007年11月28日
「ふぁ〜。むにゃむにゃ」
重い瞼を開け、眠い目をこすり。
私、Yukiは目を覚ます。

「やっと起きられましたか」
副官のいぐばぁるが私に声をかけてくる。
「やれやれ。うちの船長は本当に寝ぼすけで参っちまうぜ」
ちょっと憎まれ口をたたくのは副官のらんすろっとだ。
「だって眠かったんだもん…仕方ないじゃない」
「船長は我々と違って色々と大変なんですから」
いぐばぁるは本当にいつも優しい。

彼が屈強で名の知れたオスマントルコ出身の私掠海賊だとは未だに信じられない。
そんな彼についつい甘えてしまうのよね。
船長なんだし甘えてばっかりじゃダメなんだけどね。

「へっ。いくら大変だからって、こんな時間まで寝てるなんて信じられねーぜ」
「うっ。そんなこと言ったって・・・」
「忙しんだから。な〜んてのはもう聞き飽きちまってるぜ。もっとマシな言い訳でも考えておけよ」
らんすろっとってば、本当に一言も二言も多いんだから・・・。

「船長。今日はどうします?いつも通りカリブ海掃除にでもいきますか?」
「うーーん。どうしようかしら?いつも通りカリブ掃除に行こうかしらね。」
「ならちゃんとした大砲ぐらい積んでくれよ。カロネード砲が壊れちまったのはわかるが、もちっといい大砲を積んでくれよ」
「そんなこと言ったって、この船(ヴェネツィアンガレアス)造ってすっかり貧乏なんだから。ほとんど撃たない大砲にかけるお金なんてないわっ」
「あーやだやだ。これだから女は嫌になるぜ、何かってーと節約と言い訳ばっかり」
「ふ〜んだ。そんなに嫌ならこの船を降りてもいいのよ?」
「まぁまぁ、二人ともそのぐらいにしておきなさい。私達のお給金もバカにならないんですから。何なら貴方の給料を差し引いて大砲を買いましょうか?」
「げっ。そいつは勘弁。わーったよ。物足りねーけど、ドラコニスで我慢するぜ。ったくよー」
「で、船長。話は戻りますがカリブ海掃除でよろしいですか?」

「そうね。らんすろっとの鬱憤晴らしにカリブ掃除にいこうかしら」
「俺の鬱憤晴らしって何だよ!鬱憤を晴らしたいのはお前の方だろー!」
「何よー!」
「何だよー!」
「二人ともいい加減にしなさい。何もしないで遊んでるつもりですか?」
いくばぁるの冷たい視線と冷ややかな声に何も言えない私とらんすろっと。
「では、出港準備に取り掛かりましょうね。らんすろっと、船員達に準備するように伝えてきてください」
「はいはい。わかりましたよ。行ってきますよ。ったく。人使いが荒いんぜ。ったく」
「何なら食料や水の買い付けもお願いしてもいいんですよ?」
「げっ。んな面倒なのは勘弁。船員達のとこ行ってくるぜ。またなー」
「本当にらんすろっとって一言多いんだから・・・」
「まぁ、彼なりに色々と気遣ってくれてるんですよ。」
「えっ!?何処がっ?全っ然わかんないわっ!」
「そのうちわかりますよ。それでは私達も行きましょうか」
「うん」

スタスタと歩いていくいくばぁるの後ろを追っかける私。
本当に私ってば全然船長っぽくないのよねー。
いくばぁるが頼りになりすぎるせいもあるんだけど。
いけないけない。弱気になっちゃ。
船長が弱気になったり不安になったりすると船員も不安がるわ。

「いくばぁる、ちゃんと出港準備は整えておいたぜ!」
「ちょっとらんすろっと。何で私じゃなくいくばぁるにいうのよっ!」
「だってお前。船長っぽくねーし。言われたのはいくばぁるだしな。何か文句あっか?」
「文句あっかって、あんたねー」
わなわなと怒りがこみ上げてくる。本っ当に腹が立つわ。
この怒りはバッカニア海賊に向けるしかないわね。

「じゃぁ、らんすろっとはここで留守番ってことにして・・・」
「ちょっと待てよ。何で留守番なんだよ。俺も連れていけって」
「どーしようかしら。ね、いくばぁる」
「意地悪な事ばかり言ってないで。らんすろっと、貴方が悪いんですよ。ちゃんと謝りなさい」
「はいはい。俺がわるかったぜ。すまねー」
な、何て謝る気のない。本っ当に置いてってやろうかしら。
「では、皆で出港しましょう」
文句を言う前にいくばぁるに遮られてしまった。
まぁ、仕方ないから連れていってあげるわ。

「何してんだよ、とっとと船に乗り込めよな。お前が乗んねーと出港できねーじゃねーか」
は、はやい。さっきまでギャーギャー喚いてたのにもう乗り込んでる。
口は悪いけど、賞金稼ぎだけあって腕は確かなのよね。
敵船に一番に切り込んで、敵船長を捕らえてくるのはいっつもらんすろっとだ。
私も負けじと切り込むんだけど。後一歩でいつも負けるのよねー。
1:1で闘っても勝ったことないし。
「さぁ行きましょう」
いくばぁるに手を取られ、船に乗り込む。

帆をあげ、船員達がオールを漕ぎ。
カリブの荒波に負けずに進んでいく。
何処までも広がる青い空と青く美しい海。夜は宝石を散りばめたような満天の星空。
どれだけ眺めていても決して飽きることのないこの景色が私は何より好きだ。
この海を汚す海賊達を私は決して許さない!

ウィレムスタッドを出港して西に行くと、海賊達の根城とも言うべき島がある。
『ここは俺達の海だぜ』
と言わんばかりに幅をきかせてる。
まったく。いくら拿捕しても、後から後からわいてくる。
まるでゴキブリ並の生命力だわ、ほんと。
な〜んて感心してる場合じゃないわね。

「3時の方向に海賊艦隊発見!戦闘用ガレオン4!バッカニア海賊ですぜ!」
海賊との距離をつめていく間に、大砲の発射準備、切り込み準備を整えないと。
私が指示するまでもなく、その準備はもう終わっている。
有能な副官と船員ならではの手際のよさ。
敵船もこちらに気づき、旋回を開始し、距離をおいて火炎弾で砲撃してくる。

「ドラコニスなんかじゃ歯がたたねーよ!」
「んなこと最初っからわかってるでしょ!いまさら何言ってるのよ、らんすろっと!とっとと敵船に接舷して切り込むのよっ!多少砲撃を受けてもかまわないわっ!」
「わーったぜ。まかせとけ!」
相手の砲弾をかいくぐり、敵船の乗り込む。
乗り込んだ船員達によってあっという間に1隻を拿捕する。
「いっちょあがりー!」
「無駄たたいてないで次行くわよっ!」
「言われなくてもわーってるよ!オラっ」
すぐさま、2隻目に乗り込み、瞬く間にまた制圧し、拿捕する。
「へっ。どんなもんだいっ!」
残り2隻は最初の2隻のように簡単にはいかなかった。
こっちが寄せていっても相手は距離を取りすり抜けていく。
悔しいが、波と潮にオールが取られ、こちらの船足は遅い。
「仕方ありません。艦首直撃で突撃しましょう。大丈夫です。沈まなきゃ私達が何とかします」
いくばぁるの心強い一言で私の決意は固まった。
「全員突撃よっ!いいのもらっちゃうかも知れないからしっかり船にしがみついておくのよっ!」
「へっ、そーいうお前が落ちねーように気ぃつけろよ」
こんな状況下でも一言多い。
「ふん。そんなこと言って落ちたって助けてあげないからね!気合で泳いで帰りなさいよ」
「俺が海に落ちるわけねーだろ。」
「敵砲撃来ます!艦首に直撃コースです!」
船員の悲鳴めいた声が船上にこだまする。
ドーーン。激しい爆発と共に爆発音が襲う。激しい揺れに数名の船員が海に投げ出されたようだ。
直撃をうけ、船足がおそくなるが、敵船へ乗り込むことに成功した!
敵船に乗り込んでしませばこっちのもの。
今までと同様、あっという間に敵船を制圧する。
敵船から離れると同時にいくばぁるの指揮のもと応急修理がはじまる。
手馴れたものであっという間に艦首の応急処置が終わる。
「これで残ったのは敵旗艦だけですね」
「そうね。でも、残り1隻だからって油断しちゃダメよ。」
「へっ、誰に物言ってるんだ。んなの、皆わかってるぜ!」
「まず、相手の船足を落としますか」
そう言うといくばぁるが敵船目掛け大砲を放つ。
数発撃ったのち、敵船の帆が破れ、船上は燃え上がる。
何て手際がいいのかしら・・・。
「さ、船長。お言葉を」
「ありがとう、いくばぁる。皆、突撃よ!」
「敵船長のクビは俺がもらうぜっ!」
「ふん、今日こそ負けないんだからっ!」
砲弾をかいくぐり敵旗艦に乗り込む。
敵船長を探すらんすろっとの後ろに敵船員が。
敵船長を必死に探すあまり、全く気づいてないようだ。
「危ないっ!」
叫ぶより早く私の剣が相手を切りつける。
「助かったぜ。さんきゅーな」
「珍しく素直じゃない。てっきり『気づいてた』だの『余計な手を出すな』とか言うのかと思ったわ」
「ふん。俺は最初っから素直だっつーの!」
少し照れるらんすろっとが可愛かった。こういう面もあったのか。
船上を逃げ惑う敵船員をよそ目に、らんすろっとと敵船長を探す。
ったく。どこにいんのよー!
大人しくでてきなさいよっ!

「危ねーっ!」
後ろかららんすろっとの声が聞こえる。
あわてて後ろを振り向くと、私の眼前に剣が迫っている。
身をよじりかろうじてかわした。
でも、こんな体勢じゃ次の一撃は間違いなくよけれない。
私、こんなところでまだ死ねないっ!
転がってる酒瓶をとっさに掴み、相手へ投げつける。
相手が剣でそれを振り払うその隙をついてらんすろっとが相手を切りつける。
まさからんすろっとに助けられるなんて・・・。
「これで貸し借りはなしだぜっ」
ちょっと得意気に笑うらんすろっとが可愛かった。
一言二言多いけどやっぱりいー奴かも知れない。
「あーでも。それは早く隠したほうがいーぜ」
それってどれよ?って指差すところをみると。。。
切りつけられた時に服が破れてしまってて、胸が出てる。
あわてて胸を隠す私。
は、恥ずかしい・・・。よりによってこいつに見られるなんて。
「んなぺったんこな胸見てるこっちが恥ずかしいぜ」
な、な、なんですってー!
「うるさいわね。好きでこんな胸してるわけじゃないわよっ!」
言い切るより前にらんすろっとが自分の服を差し出してきた。
「ま、こんなんでもねーよりはマシだろ。」
意外に優しいとこあるじゃない。ちょっと見直したわ。
「んなぺったんこな胸見せられる相手がかわいそーだしよ。早く着ろよな」
ぜ、前言撤回。やっぱこいつはいー奴なんかじゃないわっ!。
いつか絶対後ろから刺してやるっ!!
「さー、船に帰るかー」
「帰るかーって、まだ敵船長を倒してないわよ」
「は?何言ってんの。そこに転がってるじゃねーかよ」
そこに転がってるのは確かに敵船長だった。
「本当だわ。オホホホ。」
「オホホで誤魔化そうとするんじゃねーよ」
ギャーギャーわめくらんすろっとを尻目に、船に帰る私。

「お帰りなさい、船長」
いくばぁるが出迎えてくれた。
「ただいま、いくばぁる。」
「で、どうでした?今日こそ先に敵船長を倒せましたか?」
ちょっと返事につまったものの。
「今日もらんすろっとに先越されちゃったわ。」
まさか助けてもらったなんて言えない。
あげく胸を見られバカにされたなんて知られたら。
もうお嫁にいけなくなっちゃうわー。

「今度はあそこの海賊に行くわよっ!」
こうして元気な女船長Yukiの航海は今日もまた続く?????



ちょっと小説風に妄想力を活かして書いてみました。
楽しんでもらえるならまた書こうかなー??

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